昨今、デジタル変革は、あらゆるところで目にします。テレビコマーシャルから役員会議に至るまで、すべてがデジタルになっています。しかし同時に、すべての産業の企業は、混乱と将来への不安というプレシャーを感じています。今年末までに、Global 2000のCEOの2/3は、彼らの戦略の中心にデジタル変革を置くと言われています [i]。しかし、それに伴い、その取り組みによる不安も出現しています。
組織のすべてを変更することは困難です。しかし、デジタルへ移行するという組織が要求するアクションは、もっともアジャイルでダイナミックな組織でさえ、やりすぎであるとしばしば言われています。多くの組織は、デジタル変革についての実現の困難さを理解しつつあり、その数は少なくありません。 2017年の Wipro Digital による調査によると、約半数のシニアエグゼクティブが、自身の企業のデジタル戦略の50%を上手く実行していないと答えています。さらに5人に1人が、デジタル変革は時間の無駄だと答えています。
デジタル変革についてのその他の意見としては、約84%の企業が失敗していると言われています [ii]。
では、なぜ、ほとんどのデジタル変革イニチアチブが、上手くいかないのでしょう。
Wipro Digital の調査に、多くの理由が挙げられています。ビジネスアライメントから、マネジメントの疑念と支援、運用上の過大な革新アクティビティまで、広範な原因が挙げられています。
しかし、私は、もっと深い要因があると考えています。それは複雑さです。デジタル変革の成功という点では、しばしば決定的なものとしては認識されていないものです。デジタル変革イニチアチブという事で言えば、複雑さは、事実、すべての文化的リーダーシップ的なチャレンジよりも、より根本的な要因のように思えます。
デジタル変革は、技術的なイニチアチブによって推進されるため、複雑さがデジタル変革にどのようなインパクトがあるのかを考えてみましょう。
デジタル変革イニチアチブを開始している多くの組織では、これは、技術の取得を意味します。利用可能なオープンソースと新しい機能の導入に傾くと、企業は、新しい技術を急速に社内に投入することになります。これは増加傾向にあり、Dynatrace が今年初め発表した調査によると、CIO の53%が今後12ヵ月で、さらに多くの技術を導入すると答えています。
では、新しい技術の適用が、いかに複雑性を高めるのでしょう。
同じ Dynatrace の調査では、1つのWebまたはモバイルトランザクションで、35の異なる技術システムあるいやアプリケーションに触れると言われています。これは、5年前には22のコンポーネントでした。
Neuralytics による別の調査では、それぞれのプロジェクトで企業が選択したオープンソース技術のランダムな組み合わせによる開発では、1つの統合プラットフォームを使用した場合と比べ、単一のプロジェクトを完成させるのに3倍の時間がかかる可能性があると言っています。
よくあるデジタル変革を実現するために行われる12のプロジェクト(100ではなく)を横断して、複数の接続要求がある場合、プロジェクトにかかる時間をその数で掛けると、悪夢のような複雑さになります。
グルーバルリアルエステート企業であるNorth America at Colliers International IT担当ディレクタ Mihai Strusievici氏のは、以下のような予言をしています。「太陽の下、あらゆることを行うと期待されるモンスターを創造してしまいました。どうなると思いますか。複雑さによって、楽しみを生み出す能力が低下し、さらにサポートが非常に困難になります。 [iii]」
生み出す能力が低下すると、その他すべてのリーダーシップ、文化的問題は、後回しになります。失敗はモラルの問題を引き出し、デジタルへの投資に疑問が生じ、エグゼクティブは困惑し経営陣は怒ります。
目標は、一歩引いて、デジタル変革に関するアクティビティとイニチアチブをシンプルにすることです。
では、実際どのようにアクティビティをシンプルにするのでしょう。
最初の一歩として、主要なビジネスマトリクスを無視しないことです。デジタル変革は商取引の法律を棚上げにするものではありません。Neuralytics の調査が示した通り、ポイントソリューションは、統合プラットフォームと比べると、開発時間がかかりTCOも高くなります。新しい輝く技術に惑わされて、ビジネスロジックを見失わないことです。より少ないシステムで機能開発できることが望ましいのです。
また、これには、プロジェクトに関して考えることを止め、より少ないアクティビティについてより考え始める事が必要です。
既にお持ちの統合プラットフォームを使って、プロジェクトを短く行えるのであれば、新しい機能やソフトウェアの調査に時間を費やさないことです。ここにプロジェクト時間の10-20%がかかる可能性がある訳ですから。
統合プラットフォームは、もう1つの問題を避ける支援をします。インテグレーションという悩みです。IoT、チャットボット、その他AI、MLツールなどの魅力的な新技術に取り組む多くのCIOたちは、集約的プラットフォームに組み込むのではなく、ひとつずつ配備すべきです。Babson College 情報システム准教授 Ruben Mancha氏は、こう述べています。「技術を、配備する1つの独立したものとして認識していますが、すべてを統合するというバリュー・プロポジションを持っていません [iv]。」高度に総合運用可能な統合プラットフォームは、技術スタックを効率化するだけでなく、システム間のコミュニケーションにとっても非常によいものです。
これは、すべて価値があるのか。
多くの組織にとって、デジタル変革に関する失敗率と後ろ向きな努力は、1つの疑問を作り出します。これは、本当にやる価値があるのか。
単純な答えは、もちろんある、です。Marco Iansiti 教授およびKarim Lakhani教授によるハーバードビジネススクールから発行された研究「The Digital Business Divide Analyzing the operating impact of digital transformation(デジタルビジネスデバイドによるデジタル変革の運用インパクトの分析)」によると、そのインパクトは非常に明瞭です。
多くの産業(消費者パッケージ物品、金融サービス、製造、小売など)の組織を横断して、デジタル機能の活用とそれによって享受する利点は、非常に大きなものです。以下の表は、デジタルを活用、活用していないという組織間で、18%のグロスマージンの差があることを示しており、この格差(デバイド)は、「デジタル変革が新しい標準となる」につれ、拡大していきます。
最後にすべての近代組織は、デジタル化するか、あるいは死ぬかになります。それ以外の選択肢はありません。問題はどのように実現するかです。ベストなアドバイスは、堅実なビジネスの論理的根拠を見ることです。多くのテクノロジ企業が成功し長く維持している理由があります。究極的には、彼らがどのように顧客を支援し複雑さを管理して、事業を行う必要があるかといことです。
シンプルなほど、よい。エレガントが最良。単一のデータプラットフォームは、デジタル変革への最短の道です。
[i]MIT Sloan Management Review, “2016 Digital Business Global Executive Study and Research Project.” July 2016.
[ii]Forbes, “Why 84% of Companies Fail at Digital Transformation.” January 2016.
[iii] Scannell, Tim. “Complexity a Killer When It Comes to Digital Transformation Success.” CIO, CIO, 7 May 2018, www.cio.com/article/3269493/digital-transformation/complexity-a-killer-when-it-comes-to-digital-transformation-success.html.
[iv] Scannell, Tim. “Complexity a Killer When It Comes to Digital Transformation Success.” CIO, CIO, 7 May 2018, www.cio.com/article/3269493/digital-transformation/complexity-a-killer-when-it-comes-to-digital-transformation-success.html.
Todd Winey
Todd Winey は、InterSystems HealthShare の戦略市場担当シニアアドバイザーです。 彼は20年以上の医療IT経験を持っています。