インターシステムズジャパン 営業部 紺木孝之
何年も前からいくつかの病院で聞いていた「アラート通知したい」というリクエスト、最近は多くの病院で聞くようになりました。
既に実装済みで、より範囲を拡大したり、精度を高めたりしている病院もいらっしゃいます。入力したデータ、発生したデータを有効活用して業務を効率化したい、安全性を高めたいという現場の要望として当然だろうと思います。
最近は読影や病理などのレポートの既読、未読管理の要望が多いですが、今後、ITに対してアラートや意思決定支援の要望がさらに増えてくると思われます。検査でパニック値が出た時のアラート、特定の感染結果が出た時の安全部へのアラート、検査値や薬による診療の判断支援など、多くの情報からデータを絞り込み、迅速にそのデータを活用するというのはITが得意とするところであり、そのデータの活用により多くの部門や医師、看護師、コメディカルの効率化を実現し、患者・医師・病院を守ることにもつながるので、ITへの期待が高まるところです。
また、IT を活用して単にアラート通知すればいいだけではなく、運用や病院のIT 環境やシステム開発やシステム運用体制などはお客様ごとに違うので、それらを踏まえた上で、操作性、その後のアクションの確認とフィードバック、拡張性、コスト、将来性など多くのことを考えて実装する必要があると思います。
例えば、レポートの管理を行いたいという話を掘り下げていくと、ニーズは病院によって様々です。
- レポート完了が該当患者の情報画面を開かなくても分かるようにしたい。
- アラートをリアルタイムで送信したい。内容やシステムに応じて、送信頻度を即時、1日1回、週1回など変更したい。
- アラートはポップアップで表示したいが、時間外は別の仕組みで送信できるようにしたい。将来は通知先をスマートフォンに変えたい。
- アラートは多すぎると見なくなるので、件数を少なくすることができるようであればアラート通知したい。
- アラートやポップアップは必要なく、一覧で既読未読が分かればいい。
- アラートの情報を一元的に管理して一覧性や検索機能が欲しい。
- 重要フラグを付けて運用したい。
- 読影レポートは重要フラグを付けることはできなそうだ。
- 悪性という文字など特定の文字列が入っていると重要としたい。
- レポートのアクセスログを取っているシステムと取っていないシステムがあるが、統合的に管理したい。
- 医師が出張したり退職した時の為にアラート先をグループ管理したい。
- 予め指定された期限を過ぎても既読にならない場合、リマインダーの機能が欲しい。
- 既読スルーに対応したい。
- 今後、システム毎にアラートが違うという事にならないようにしていきたい。
上記はレポートの未読既読管理とそのアラートという要望の一つであり、それを含め新しい要望があった時に既存システムをカスタマイズして個別対応するのが一般的な方法かと思いますが、このようなリアルタイムデータの活用について、要望が現場から出てきた時に IT がボトルネックにならないためには、どんなことを考えておかなければならないでしょうか。
ワークフロー改善、緊急時の迅速な対応、安全性向上など、現場の要望に応え続ける為に重要なことは、データをいつでも使える状態にする事と、病院に存在する多くのシステム全体を一つのシステムとして考える、以下のようなアーキテクチャ思考だと考えています。
- 特定のシステムに大きく依存する仕組みにせずデータ中心で考える。
- そのために、それぞれのシステムからリアルタイムにデータを出力(HL7、FHIR などが望ましいが、既存の電文や csv 形式の差分情報でもいい)してもらえる、外部データを受け入れてもらえるようにする。
- できればデータは1箇所にあった方が良い。
- データ量が爆発的に増えても、データの種類が増えても格納や活用ができる。
- データを再利用しやすくシステム運用の手間が減るシンプルなIT環境。
- システムが違っても共通の機能(アラートなど)は共有できるようにする。
- 病院で開発者を育成する、もしくはデータを活用できるようなIT環境にしつつ開発者を派遣等で雇う。
上記7つのことはすぐに実現できるわけではなく、5年10年という長い時間軸で取り組んでいくものだと考えています。
インターシステムズはデータありきという基本コンセプトの基、ITをシンプルにするために様々なデータを格納でき、SQL、オブジェクト、および独自のダイレクトアクセスなど様々なアクセスができ、医療標準(HL7、DICOM、SS-MIX2、IHE-ITI、FHIRなど)に対応した高性能医療用データプラットフォーム製品である IRIS for Health や HealthShare Health Connect を提供しています。
データの出し入れ(できれば API で)を行える様々なシステムが医療用データプラットフォーム製品につながり、データに近いところで開発できる体制があれば、レポートの管理だけでなく今後発生する様々な現場の要望に対して迅速にITサービスを提供できます。日本でも病院の主要システムのベンダーにリクエストをして、データの出力やデータの受け入れ(外部から更新)を実現しているお客様がいらっしゃいます。
情報が桁違いに増え、情報を参照する仕組みがどんどん増えるこの時代、特定のシステムのみに保存されている個々の患者データを特定のデバイスから見なければ重要な事が分からない、というのは、たくさんの患者を相手にしている医師にとっては大変かと思いますので、アラートの適用はさらに発展していくと思われます。その度に1から個別開発を続けるのは限界が出てくるかもしれません。
地域医療連携においてもアラート通知は大変重要であり、海外の多くの医療圏やグループ病院で活用されている地域医療連携プラットフォーム HealthShare Information Exchange には Message Delivery という機能を含んでいます。
海外の地域医療連携では、患者が予約の際に来院せず、検査結果が特定の範囲内にある場合、適切な診療を行えるように医師や医療チームのメンバーに自動的にアラート通知される。糖尿病の疾病管理プログラムに登録されている高リスク患者は、患者が HbA1c を検査する時期が過ぎていると医療チームのメンバーに自動的にアラート通知される。システムに登録されている患者が救急で病院に運ばれると、患者が加入している保険会社にアラート通知され、すぐに適切な対処が取れるなどの事例があります。
インターシステムズは、直販もしくはパートナー企業と高性能医療用データプラットフォームの IRIS for Health や HealthShare Health Connect を展開しています。医療用データプラットフォームを活用して、まずはアラート環境を開発し、将来に向けて少しずつ医療用データプラットフォームを拡張利用して病院IT環境を変えていきたいというお客様と共に頑張りたいと思います。
中長期の取り組みですが、ご興味のあるお客様はご連絡をお待ちしております。