インターシステムズジャパン
マーケティングディレクタ 橋澤満貴
近年、診断レポート見落としによる診療の遅れなどの深刻な事態が問題となり、医療安全を担保するためにアラートシステムへの期待が高まっています。当社のお客様をはじめ、実際にその構築に取り組む医療施設も多くあります。海外でもそうした意味でのアラートシステムの運用以外に、多施設間の医療連携、多職種の介入による患者の健康管理、患者エンゲージメント促進のためのアラートシステムの活用が進んでおり、こうした多施設・多職種で活用されている例をご紹介します。
米国ロードアイランド州にある地域医療連携組織 RIQI(Rhode Island Quality Institute)は、主治医、病院の医師、ケアマネージャなどの患者に関わるケアチームメンバーに、入退院をはじめとするクリニカルイベントのアラートをリアルタイムで通知しています。これにより退院後のフォロー体制を整え、同じ病気での再入院を9% 減少させました。同組織は CurrentCare(カレントケア)という患者ポータルを提供し、各医療機関からの情報を患者と共有していますが、これを拡張して Designee Alert(デジグニアラート:被指名者通知)を提供し始めました。これは、家族など患者が指定した人に、患者のクリニカルイベントを通知するというものです。通知には、患者名とCurrentCare へのリンクがあり、指定された人は、CurrentCare から通知の詳細内容を見るという仕組みです。家族や患者の大切な人が、状況をすぐさま把握することで、彼らの不安や混乱を低減することができ、さらに家族などが患者の理解を深めてケアに介入することができます。
同じく米国でニューヨーク州最大の医療連携組織 Healthix(ヘルシックス)では、患者に関わる様々な職種のケアチームメンバーへの通知として、3種類のアラートを運用しています。Healthix Advanced Alert は、患者毎に事前にしきい値を決め、それを超えたときに通知するもので、例えば、一定期間内に一定以上の救急搬送数があった場合などに通知が送られます。Healthix Plus Alert は、診断、入院・通院、検査結果、放射線などの広範な診療情報を含むもので、ニューヨーク州全土の医療機関から情報を得ています。このデータのサマリは、医師の EHR に直接送られ、慢性病や高リスク患者のモニターに利用されています。最近開始した Healthix Essential Alert は、患者が医療施設に訪れた際に送られるもので、患者ID、日時、入所理由のみ記載されています。これは、このほどのニューヨーク州での個人情報に関する法令の変更を受け、患者の同意なしに通知することができるようになり、これまでの2倍以上のアラート30万件/月以上の通知ができるようになりました。救急搬送された患者の主治医が、即座にアラートを受信することで、救急医に患者の治療に際して必要な情報などを知らせることができ、より適したケアの提供が可能になりました。
さらに、この Healthix のアラートは、ヘルスプランでも利用されています。ヘルスプランは、米国の民間健康保険会社ですが、医療費の支払いだけでなく、治療プランや医療機関などの指定も行います。ヘルスプランでオスカー保険は、Healthix から、診療イベントのアラート通知と自身が保有する患者ごとの医療費請求データを分析して、計画通りの治療を受けているかなどのモニターをする他、コスト効率のよい最適な治療を受けられるような提案やカウンセリングなど、加盟者の治療に積極的に介入し、患者エンゲージメントへの総合的なアプローチを行い、加盟者の治療と健康を支援しています。
ご紹介した事例は、当社の医療連携プラットフォーム InterSystems HealthShareを活用いただいたものですが、 米国では「ケアのギャップ」という、ケア施設の移行の際の溝に患者が陥り、そこで治療が分断されてしまうことが大きな課題として認識されています。こうしたケアの溝を埋めるために、テクノロジーの活用に大きな期待を持たれています。インターシステムズは、「Bring Together the Information that Matters -すべての大切な情報を利用可能に」を掲げ、医療・健康にかかわるすべてのデータを、アクション可能な形で利用できるようにすることに、これからも尽力して行きたいと思います。