社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
法人本部 情報部 部長 山野辺裕二
InterSystems 社の最近の動向に疎くなりつつあった私であるが、あるイベント会場で日本統括責任者の植松さんと久々にお会いしたことがきっかけとなり、グローバルサミット2018の Healthcare Leadership Conference(HLC)に参加する幸運に恵まれた。
会場はテキサス州サンアントニオのJWマリオットで、ゴルフコースやウォーターパークを持つリゾートホテルである。私は空港到着後のレンタカー窓口で「あのエリアにある好きな車に乗ってっていいよ」と言われたのにまず驚いた。それは客がその場で予約と異なる車で出発しても対応できる Agility がバックエンドに存在することを意味するからである。つい「このシステムの基盤も InterSystems なのかも?」などと考えつつ30分ほどでホテルに到着した。グローバルサミットは9月30日(日)夕方の野外レセプションで開幕、HLCは月曜と火曜の午前にわたっていた。今回は140名以上の参加があり、日本からは 昨年も参加された本多・土屋の両先生をはじめ、大学を中心に7名の参加があった。
● Freedom of Choice
月曜午前の最初のプログラムはサミット全体の基調講演で、まず InterSystems 社の幹部3名が登壇した。まず強調されたキーワードは、AI, Cloud, Freedom of Choice の3つであった。前二者は耳慣れているが、Freedom of Choice は馴染みがない。最初は端末の選択のことかと思ったが、後の講演では開発環境やクラウド基盤の選択の自由度にも触れており、より抽象的な概念だと感じられた。講演がデータの持つ力やIRIS Data Platformの最新情報と進むにつれ、目に焼き付いたのは同社のロゴの下に書かれた Health | Business | Government であった。いつの間にか(調べてみると2016年であった)同社のロゴが変わっていたことにはなんとなく気づいていたが、この3語が同社の羅針盤となっていることを再認識した。
基調講演の4人目は、米国ニューヨーク州で最大規模のNorthwell Healthからであった。HealthShare と IRIS Data Platform をバックに持ち、医療者向け情報の集約と患者コンタクトの効率化を実現していた。第一線業務では私の職場でもそれに近い結果を得ているが、講演ではデータ分析ツールとして多様な製品が使えることが紹介され、これも Freedom of Choice の成果なのだと感じた。
● Panel & Round Table
基調講演の後は歩いて10分ほどの別棟に会場を移してHLC単独のプログラムとなり、Payer, Provider, HIE の3つの切り口でのパネルディスカッションと参加者全員がテーブルごとに討議する時間が設定された。パネルではパネリストによる短い発表と討議が行なわれ、HIE では日本から東北大学の中山雅晴先生が成長著しい宮城県の MMWIN を紹介された。
テーブルディスカッションでは、8人程度のテーブルが Delivery Model Transformation, Integrating Mental & Social Health, Patient Engagement, Care Coordination, Innovation & Agility, Payer Provider Relationship の6グループに分けられて課題と可能性、ITの役割と成果指標について意見交換した。私は Patient Engagement のグループに振り分けられており、超高齢化と人口減少社会でのアクセスの困難さや PHR の利点などを紹介した。
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夕方にはサミットに合流し、雨上がりの野外でSiriの基礎技術の開発者による講演のあと、飲食とともにドローンやVRのアトラクションを楽しんだ。
● Affective Computing & IRIS for Health
火曜の朝は前日と同じくサミット会場で、Affective Computing についての講演から始まった。ウェアラブルデバイスによるてんかん発作の予見につづき、AIの力を借りることで明日のうつ状態を予測できると説いた。続いて InterSystems からは IRIS for Health の発表があり、Rhodes Group から検査ラボを支えるIRISの成果が紹介された。
場所を移した HLC では、この3演者への質問タイムが取られ、その後に4つめのパネルディスカッションが続いた。3つの企業から、市中での無人薬剤払い出し機、地域での救急車ナビゲーション、検査データの集約・分析が生む新たな価値についての発表があった。その後は月曜日のラウンドテーブルディスカッションのまとめがテーマ別に発表され、2日間の基本プログラムが終了した。
午後からは InterSystems 社による日本の参加者の興味に応じた NLP や FHIR についての小グループ説明、ホテル内レストランでの着席ディナーなどが続いた。
水曜日はサミットのセッションが継続し、ヒューストンへの施設見学ツアーなども企画され、参加者は好みのイベント(または The Alamo など周辺観光)を楽しんだ。
● その後
10月5日に帰国した成田空港では、京成線とJR線がともに運転見合わせとなっており、残されたChoiceであるバスのチケット売り場から延びる絶望的な行列を見て、世界との Agility の差に情動を禁じ得なかった。「我々にはまだまだ伸びしろがあるということかな」と気を取り直して旅を終えた。
2019年のグローバルサミットは9月22-25日にボストンで開催される。
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