顧客: ニューヨーク州の医療情報ネットワーク Hixny
課題: 医療機関のワークフローの中で、健康の社会的決定要因(SDOH)情報へのアクセスと、地域のソーシャルケア機関への紹介を簡素化
成果: InterSystems HealthShareを基盤とした Hixnyの臨床サマリーWebページにプラグインするアプリを導入し、SDOHに対する認識が高まり、ソーシャルケアの紹介率が向上
驚くべきことに、ある人口における米国の平均余命に関係する上位3つの指標は、介護・老人施設への入居率、精神衛生上の問題、そして歯の喪失率です¹。 これらの指標の背景にある所得水準、介護へのアクセス、ストレス、その他の社会的要因は、遺伝や医療サービスへのアクセスよりも健康に大きな影響を与えます²。 しかし、これまで健康の社会的決定要因には、臨床ケアにおいて十分な注意が払われていませんでした。
もし私たちが、コストのかかる健康問題の原因となるその上流部分を考え、まず社会的決定要因に取り組むことがシンプルに行えたらどうなるでしょう? ソーシャルケアの必要性を評価する論理的な場所は、医療へアクセスする時です。 しかし、臨床医は通常のワークフローの中でそうしたアセスメントを行う時間はほとんどなく、ソーシャルケアの提供をどこに、どのように紹介すればよいかを知っている者はほとんどいません。 今、ニューヨーク州北部では、Hixny health information network (HIN)と社会サービス・コーディネーターのHealthy Allianceが、この問題解決のために力を合わせています。
臨床医のためにソーシャル・ケア紹介を簡素化
InterSystems HealthShare®上に構築された Hixny HINは、ニューヨーク州の州都および北部地域のすべての病院とほとんどの診療所や医院で利用可能です。 州からHixnyへの助成金が、HIE内のソーシャルケア紹介機能を提供するソフトウェア開発と、その利用を奨励するための臨床医への働きかけに使われました。 「Hixnyは医療コミュニティへに幅広くリーチしており、ソーシャルケア紹介機能を含めることは理にかなっていました」とHixnyのCEOであるMark McKinney氏は述べています。 「最初に必要だったもののひとつは、ソーシャルケアを提供する事業者が誰で、何を提供し、どこに位置しているのか、というディレクトリでした」 ディレクトリを探した結果、Hixny は Healthy Alliance にたどり着きました。 MaKinney氏は、「彼らにはすでに名簿があり、人々が必要とするサービスを、住んでいる場所に最も近いところで提供する方法を知っているスタッフがいます」と説明しました。
Hixny CEO
この協力の結果で、SMART on FHIR アプリができました。これは、HealthShareにプラグインして、臨床医がHixnyの包括的な患者記録をEHR内で直接、またはHixnyの医師向けポータルを介して閲覧すると、患者の社会的・医学的履歴が並べて表示されるものです。 通常のワークフローを離れることなく、臨床医は2つの方法のいずれかでソーシャルケアサービスを紹介することが可能です:
- 食糧援助や住居など、患者のニーズに関する詳細を入力します。Hixnyの技術には、HealthShareの記録から患者の基本情報が入力されます。 臨床医が患者から口頭で承認を得ると、Healthy Alliance に依頼が送られます。
- すでにソーシャルルサービス提供者とそのサービス内容について熟知している臨床医は、特定の地域のサービス組織(CBO: community-based organization)の名前を選択することができます。 また、アプリの検索機能を使って、場所、患者の属性、患者のニーズに基づいてCBOを特定することもできます。 このサービス依頼は、Healthy Allianceを通して行われます。
1つ目のケースでは、Healthy Alliance の専門家が、患者のニーズに最も適したCBOを紹介し、それを最後まで管理します。 2つ目のケースでは、Healthy Alliance は選択されたCBOに連絡をして、紹介状が届き、患者とコンタクトが取れたことを確認します。 どちらの場合も、Healthy Allianceは結果データをHixnyと紹介元の臨床医に送り返し、一連の紹介のサイクルを終了します。 「2022年3月にアプリが稼動して以来、紹介者の92%が最初の選択肢を利用し、Healthly Alliance に患者とCBOをマッチングさせています」とMaKinney氏は述べています。 これは、医師にとっては意味のある "簡単なボタン "です。 1回、2回クリックするだけで、アプリケーションがすべての情報を取得し、医師は "送信 "ボタンを押します。1分以内にすべては完了します。
トレーニング不要
このアプリには、よいソーシャルケアを紹介し、いつそれを行うかのガイドラインが含まれています。 しかし、Hixny はその使い方のトレーニングは行っていません。 「誰かに説明しなければならないなら、それは複雑すぎると私たちは思います」とHixnyの製品開発マネージャー、Julia Prusik氏は言います。 その代わりに、Hixny は医師にこのツールが利用可能であることを通知し、彼らがこのツールを使い、診療の中で組織的に利用できるようにしました。 「あるユーザーは最初の3ヶ月で75人の紹介をしました」とPrusik 氏は言ます。 「私たちは彼女のやっていることにとても感銘を受けました。 彼女は、長い間この機能を必要としていて、すぐに使う事ができるようになったと言っています。」
Healthy Alliace、チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー
正しいことを簡単にする
アプリの成功には、医師の実際のワークフロー・ニーズに対応することが不可欠でした。 「私たちは、すでにソーシャル・リファラル・テクノロジーを使っている医療機関やケアマネジャーなどと協力して、そのプロセスのどこが優れていて、どのような障壁が残っているのかを調べました」とPrusik氏は述べています。「私たちは、そのフィードバックを開発に統合しました。」
McKinney氏は、Hixnyの目標は既存のソーシャルケア紹介システムをリプレースすることではないと説明します。 「目標は、より多くのドアを同じ場所に作ることです。政府プログラム、教会、学校、メディケイド(保険機関)、食料配給所、メンタルヘルス、その他の利用可能なリソースなどへアクセスできるドアです。」
Healthy Allianceのチーフ・トランスフォーメーション・オフィサーであるLynne Olney 氏は、ソーシャルケアは、CMSやNCQAなど、特定の支払いプログラムや認証の要件になりつつあると指摘します。 「より多くの医療機関が、健康の公平性とソーシャルケアのレンズを通して患者を見ていることを示ことが必要になります」と彼女は言います。 「Hixnyと協力することで、私たちは正しいことを簡単にできるようになりました。」
1 - Social Determinants of Health Challengains, RTI Health Advance, November 2, 2021.
https://healthcare.rti.org/insights/social-determinants-of-health-data-challenges
2 - https://www.cdc.gov/about/sdoh/addressing-sdoh.html